国際共同研究でアフリカ伝統医学の薬理効果を解明

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てんかんは広くみられる神経疾患で、多くの場合抗てんかん薬による治療が効果を示します。しかし、アフリカのマラウィでは医療体制の脆弱性や経済的問題からこれらの薬物療法が利用できない場合が多く存在します。一方で患者はハーブを用いた伝統医学により治療されることが多いものの、その薬理効果には不明な点が残されています。この問題に取り組むため、マラウィ出身の大学院生Gwedelaさんは現地の研究者と国際共同研究を進め、その薬理効果を明らかにしました。

Title: Anti-seizure effects of medicinal plants in Malawi on pentylenetetrazole-induced seizures in zebrafish larvae

Authors: Mayeso Naomi Victoria Gwedela, Haruhi Terai, Fanuel Lampiao, Katsuyoshi Matsunami, Hidenori Aizawa

Journal: J Ethnopharmacol (2021) in press [Link]

生物資源の国際共有に際しては、各国の遺伝資源はその国が権利を持ち、その利用(Access)には政府の許可が必要です。遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(Benefit-Sharing)を踏まえてAccess and Benefit-Sharing (ABS)に関する同意をマラウィ国内機関と取り交わした上で、マラウィ大学の研究者と共同研究を始めました。

ハーブ抽出物の抗痙攣効果を調べるため、神経活動を過剰にするGABA受容体拮抗薬を投与したゼブラフィッシュを用いて研究を進めました。実験の結果、三種類のハーブ(Margaritaria discoidea, Dalbergia boehmii, Dalbergia nitidula)にけいれん発作を抑制する効果がみられました。これらを投与した動物では、神経細胞の活性化に伴い発現する最初期遺伝子の発現が抑えられており、脳波にみられる発作波の頻度も軽減していました。

現段階ではこれらのハーブから抽出されるどのような成分が、神経細胞に作用するのかは不明なままです。広島大学薬学部との共同研究を進め、この問題に取り組んでいきます。

相澤 秀紀
相澤 秀紀
教授

宮城県出身、博士(医学、千葉大学大学院)。精神科での経験を背景に神経解剖学・生理学を活かした研究で疾患の病態生理に迫りたい。

Mayeso Naomi Gwedela
Mayeso Naomi Gwedela
講師

アフリカのマラウィ出身の大学院生。母国のてんかん治療がハーブ医学により支えらていることに注目し、ハーブの抗てんかん効果についてゼブラフィッシュを用いて研究しています。