紫外線の特性を利用して脳を三次元的に可視化

脳の神経回路は空間的に複雑に入り組んでおり、三次元的な解析技術が不可欠です。しかし、このような解析を可能にする顕微鏡の多くは高額な部品を複数組み合わせるため、多くの研究室で導入が困難で、用途が限定されているのが現実です。この問題に取り組むため、比較的安価で入手しやすい紫外線光源と脳を薄くスライスするミクロトームという機器を組み合わせた新しい顕微鏡を開発しました。

Deep UV light

紫外線のうち280 nmという短波長のものは対象物の表面でエネルギーが減衰し、表層の限られた部分をスキャンする事に適しています。この特性を利用して、ホルマリン固定した脳標本を薄切しながら表面をスキャンすることを繰り返し、脳の三次元再構築することができました。

Deep ultraviolet fluorescence microscopy of three-dimensional structures in the mouse brain, Scientific Reports (2023)

この技術の背景には、先行研究で提案されたマイクロコントローラを基盤としてオープンソース技術が活用されており、透明性が高くかつコストパフォーマンスの高い技術開発が可能になっています。

Workflow in DUV imaging

具体的には、マイクロコントローラにより制御された検出器を三次元的に操作し、薄切される脳標本の表面をスキャンすることで、画像データの取得を自動化しました。取得したデータはオフライン解析により再構築され、コンピュータ上で三次元データを再現します。

Imaging neural pathways in the animals brain

#Neurobiology #Hiroshima #Brain #神経 #広島 #脳

相澤 秀紀
相澤 秀紀
教授

宮城県出身、博士(医学、千葉大学大学院)。精神科での経験を背景に神経解剖学・生理学を活かした研究で疾患の病態生理に迫りたい。

Deepa Kamath Kasaragod
Deepa Kamath Kasaragod
助教

イギリスで光学の研究により学位を取得し、新しい顕微鏡の開発研究を行っています。現在、脳の神経回路の三次元的可視化を行う顕微鏡を開発中です。