敗血症におけるミクログリアの役割についての論文を発表しました。

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手術や感染、外傷など様々な要因により敗血症と呼ばれる多臓器障害が引き起こされます。この全身炎症を伴う病態では、意識障害や認知機能障害が起こり、敗血症脳症と呼ばれています。この脳症の病態には不明な点が多く残されており、その病態解明は予後の改善や新規治療法開発に欠かせません。

トランスローケータタンパク質TSPOはミトコンドリアに有るタンパク質で、炎症反応に関与することが知られています。アルツハイマー病や多発性硬化症などの神経変性疾患では、TSPOが脳の病変に関与することが示唆されていますが、敗血症脳症における研究は皆無です。

そこで私達はマウス敗血症モデルにおけるTSPOの役割を調べるため、TSPOノックアウトマウスやTSPOの阻害剤による薬理学的操作を使った研究を進めました。研究の結果、TSPOの阻害は敗血症における脳機能障害を減弱させる事がわかりました。小野薬品工業との共同研究によりONO-2952がTSPO阻害効果を持つことが示されています。この薬剤により敗血症脳症モデルの症状が改善しました。

Hiroshi Giga, Bin Ji, Kazuya Kikutani, Shuji Fukuda, Takashi Kitajima, Seishi Katsumata, Miho Matsumata, Tetsuya Suhara, Shigeto Yamawaki, Nobuaki Shime, Koji Hosokawa, Hidenori Aizawa “Pharmacological and Genetic Inhibition of Translocator Protein 18 kDa Ameliorated Neuroinflammation in Murine Endotoxemia Model” SHOCK (20) in press [PubMed] [Journal website]

本研究は、小野薬品工業及び放射線医学総合研究所との共同研究による成果です。

TSPO suppression improved behavioral alteration with systemic inflammation

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相澤 秀紀
相澤 秀紀
教授

宮城県出身、博士(医学、千葉大学大学院)。精神科での経験を背景に神経解剖学・生理学を活かした研究で疾患の病態生理に迫りたい。

儀賀普嗣
儀賀普嗣
医長

救急医学の臨床の傍ら、当研究室で学位を取得しました。集中治療室での治療が必要になる敗血症で問題になる神経炎症について分子生物学的な研究を行っています。

菊谷和也
菊谷和也
助教

救急医学の臨床の傍ら、大学院生として集中治療における神経炎症の役割について注目して研究を進めています。